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SF ブラック・ホールにのまれて 

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「ブラック・ホールにのまれて」 宮本宗明 ㈱星雲社 2017年5月10日発行 アマゾンほかネット書店にて好評発売中

エドモンド・ハミルトン再評価 12 「魔法の月の血闘」

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「魔法の月の血闘」エドモンド・ハミルトン著   野田昌宏 訳   ハヤカワ文庫SF 昭和49年8月31日発行 Magic Moon Edomond Hamilton 1949年 初出:『キャプテン・フューチャー誌』:1943年秋号


ハミルトンが39歳のときの作品。
キャプテン・フューチャーシリーズとしては、最後の方、16番目の作品。このシリーズは別作家による作品もあるので、気をつけないといけないが、これは本物。

表題は「魔法の月の血闘」だが、原題は「Magic Moon」だ。
血闘というが、血が流れるのは、最後の方、
「だしぬけに金星人は立ちあがり、口から、血を吐きながら数歩あるいたかとおもうと、ドッとばかりにそこへ倒れ伏した」
という一行だけである。

なぜ、魔法の月に血闘なのだろう? と考えていたら、キャプテン・フューチャーが、スー・スアールの兄を土星で射殺し、本人はとり押さえて惑星警察機構へ引き渡した過去があるのだ。四年前のできごと、つまり、兄の復讐とその返り討ち、すなわち血闘である。



そういうこととは、別に、この悪党スー・スアールがあらくれ男どもを扇動して、暴動をおこし、スティックス人の町へ攻め込む、そのときの戦いのことを表していもいるようだ。

なぜなら、スティックス人というのは、戦いを好まない、戦いをしない種族なのに、生きるか死ぬかの選択のとき、それが翻るからである。

「スティックス人たちは、永年にわたって自分たちが抱いてきた非暴力の信条では、おそいかかってくる凶悪な暴徒を防ぎとめることができないのをはじめて覚ったのだ。ついにかれらは、その平和を愛する伝統が致命的なあやまちであることを知ったのである」
(スペースオペラにかぎったことではない、現代世界でも非暴力・平和主義はむり?)

まあ、そういうわけで、

「そこでかれらは落ちている石ころを拾っては投げつけ、ついには、素手で相手の喉笛にむしゃぶりつくのだった」

という武器のない戦いになる。つまり、血闘である。彼ら自身との血の戦いなのだ。表題としてはこちらの方が真剣みがあるが、映画のロケという平穏無事な小説が、いつ本物と見破られるのか、とか復讐がはじまるのでは、とかのはらはらするような展開になるのは、キャプテン・フューチャーもののだいご味ともいえよう。

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スティックス人がやってくる。



そして、ストーリーとしては、意味深長なところがないので、なにかを忘れたいときにこの文庫本を開く、すると、その目的は十分に達成されるというものだ。

本の内容を見ると、キャプテン・フューチャーの冒険のいくつかを映画化するために、主役等を公募して、それに応募した本物たちがロケに加わるーー企画した金持ちの企みを暴くために、という設定になっている。
映画のロケ地は、当然宇宙であり、最初の惑星は、木星のジャングル・タウン=大火炎海にほどちかいところ、大噴火がおこり、そこでオットーが殺されるが、じつは生きていて、次のロケ地、海王星の海底にある海底都市と海棲人とブレーザー(大吸い込み)、ジュオン・ランドールの死の危機があり、そして、最後が冥王星の第三の月すなわちスティックスでの血闘とつづくのである。

当然ながら、これらのロケ地は本シリーズですでに描かれた冒険の舞台だーー木星が、「恐怖の宇宙帝王」、海王星が、「挑戦! 嵐の海底都市」、冥王星のスティックスが「暗黒星大接近!」がそれである。だから、作者としてはわりに気楽にシナリオを案出できるだろうが、そこはハミルトンらしく一工夫されている。

この一工夫がなければ、ただの活劇でしかないので、いたって平凡なSFスペース・オペラになってしまう。

「カーティス・ニュートンは、おそってくる深い絶望感をやっとのことでおさえつけた。そして大きな声でいった。

「ということになれば、スー・スアールとその子分どもがここへやってくるのは明日かあさってだな。よし、そうとなればすぐに対策を講じよう」
「どうするというんだ?」エズラ・ガー二―が絶望的な表情でいった。「きみが計画している胞子破壊砲装置は間にあわんだろう」


胞子破壊装置というのは、スティックス人の太古のおそるべき科学兵器〈破壊者〉を無力にする装置なのだ。
〈破壊者〉の威力は次のようなものである。

「あっという間もなく金属製の建物がまるで枯れ木のようにくずれ落ちた。灰色の埃が金属に付着し、信じられぬ速さで増殖しながらその金属を食い尽くすのであるーー大気中に放出された〈破壊者〉はあらゆる方向にむかって拡散しつつあった」

というものすごさ、である。宇宙船だろうが原子銃だろうが、ベルトの金属だろうが、酸素ボンベだろうが、無線機だろうが、金属という金属はすべて浸食されてぼろぼろにくずれてしまう。この衛星スティックスは宇宙ロケットもない原始の状態へ変化してしまったのである。つまり、キャプテン・フューチャーは地球に連絡することはおろか、脱出する手段もない状態になったのだ。


この<破壊者>のアイデアは、65年後、2008年公開「地球が静止する日」に使われている。宇宙人が使うのは同じだ。


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「地球が静止する日」より


金属ばかりでなく、触れるものはすべて粉々にしてしまう。


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トラックもスタジアムも破壊する。(空を舞うほこりのようにみえて、実体は微細な虫なのである)


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ところが、
この埃のかたちをした<破壊者>を無力にする装置を、キャプテン・フューチャーは、金属のない世界で作ろうとするのだ。
なんと無謀な涙ぐましい努力ではないか!

それこそがハミルトンの真骨頂で、すくなくともSFとして読めるものに仕立てている要素なのである。


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キャプテン・フューチャーと恋人のジョオン・ランドールは飛び立つロケットを見送る。コメット号はぎりぎりで〈破壊者〉の脅威をまぬがれていたのだ。

「東の方に目をやると、ちょうど離着陸床のあたりからまばゆいロケットの噴射光が中天高くのびていくところだった」

ジョオン・ランドールはおもわずカーティスの腕を固くにぎりしめた。「カーティス、ということは、、、」
キャプテン・フューチャーの声は重かった。「そうだ、ジェオン。もはやわれわれはスティックスから脱出することさえ不可能になった。そして、外からも宇宙船がはいってくることもできない。やってきたとたんに埃にくわれてバラバラだ」
ジョン・ヴァンデールがヒステリカルな声をあげた。「おれたちはここに永久に幽閉されてしまったのだ!」

この状態から、キャプテン・フューチャーの時間との闘いがはじまるが、金属のない世界でどうやって太陽光通信機と放射線発生装置、そしてガラス製の剣をつくりあげていくのか、そして、復讐の念にもえるスー・スアールが扇動する暴徒たちとどう戦い、勝利するのか?

ふつうではむりなことが、ハミルトン世界ではお約束ごとのように達成されていく。読んでいて、うまくいきそうもないことが目の前で完遂されると、なんとなく安心するのだ。不安解消の魔法清涼剤のようなものである。すばらしいではないか!

会話や飲食、服薬という手段ではなく、読書という手段で。






いくらなんでも、ばかばかしくないか。
と、確信犯的に思うけど。

ジョン・ブラナー 再評価 12 SFマガジン掲載短編 ③

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「生なきもの」ジョン・ブラナー著  石川智嗣訳 SFマガジン1973年11月号 №179 掲載

輪廻はSFになるか? という問いかけを含んでいるめずらしい短編だ。


当時、
SFマガジン 1973年11月号の掲載作品はつぎのとおりであった。

1  亜空間要塞  半村 良
2  ヴァチカンからの吉報   ロバート・シルヴァーバーグ
3  失踪した男   キャサリン・マクリーン
4  直立猿人    河野典生
5  生なきもの   ジョン・ブラナー
6  最後の狩猟   田中光二 

英語圏で、「生なきもの」が掲載された雑誌(初出?)を調べてみると、
ファンタジー ・アンド・ サイエンス フィクション、1967年7月  出版社: Mercury Press, Inc.
がヒットした。
内容は以下のようなもの。

4 • The Day Before Forever   キース・ローマーの中編小説
59 • 漫画: 「そんなことないですよ、ハスブロウさん!」  ガーハン・ウィルソンによるインテリアアートワーク
60 •バルグラモの地獄  ラッセル・カークの短編小説
77 •アルターエゴ    ウーゴ・コレアによる短編小説
80 •過去の出会い   ロバート・ネイサンの短編小説
86 • Coming Soon ... (F&SF、1967 年 7 月) • ノンクレジットによるエッセイ
87 •修士論文   デビッド・マッデンによる短編小説
99 •現実間の飛行   ドリス・ピトキン・バックの詩
100 •海の怪物とニューヨーク市長  ガーハン・ウィルソンの短編小説
102 • 12 ポイント スリー シックス ナイン   [アシモフのエッセイ: F&SF ] •アイザック・アシモフによるエッセイ
112 • ヴィタヌルズ  ジョン・ブルナーによる短編小説

ブラナーの「The Vitanuls」(生なきもの)は最終行にあるヴィタヌルズだ。

(表紙はこんな感じ)
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表紙: ジャック・ゴーン 画 キース・ローマーの「The Day Before Forever」が描かれています。この作品の内容は、「『デイ・ビフォア・トゥモロー』は、極低温によるタイムトラベルというテーマに興味深い展開を加えたハードボイルド ミステリーです」ーー(極低温によるタイムトラベル?ーーもう、ほんとにすごいね!)(表紙引用)カッコ内のみ筆者。


本題にもどろう。
「生なきもの」は、ヒンズー教とユダヤの伝承をミックスさせた稀有な短編である。テーマはなんだろうか? 一筋縄ではいかないので、まず、内容をみると、こんな感じ。

ーー物語は、WHOの医師ベアリー・チャンスが、インドの病院を訪れたところから始まる。
処置法の調査にやってきたのだーー何の調査か?分娩のである、そこは産科病棟の分娩室なのだった。
ちょうど、老医師、守護聖人とよばれるコティワラ先生が、新生児の目をのぞきこんでいるのに出くわす。
生まれたばかりの赤ん坊は、無生病なのだった。
「アルファー波およびシーター波の完全な欠損ですかな?」のちに出会ったとき、老医師はそう語るのだが。

その日から、生まれる子供の多くが無生病にかかりはじめたのである。最初は10パーセントだったが、しだいに増加してついに生まれる子の80パーセントが心の欠損した状態になった(心の欠損、すなわち無生病だ)
同時期に、WHOは抗老化薬の発見を発表していた。薬をのめば、人類は老いなくなったのである。

(この、生まれる子が無気力というテーマは、先に再評価した短編「隠れた子ら」32歳発表、とほぼ同じだ。
ブラナーの人口問題への関心がずっと続いていた証拠でもあろう。

WHOのチャンス医師は、無生病から赤ん坊を救うため、解決策を探して、引退した老医師コティワラを追い求める。その最初の患者の目をのぞきこんだコティワラこそがなにをなすべきか教えてくれるはずだ。

(ここで、子供たちがスリーパーとして異星人から送られたスパイであるとかだと、侵略SFになるが、そちらへ行くと通俗読み物になるところ、ブラナーはヒンズー教という宗教とからめる結末へと導いていくのである)
(イエスによる侵略なら、『聖なる侵略』になるが、ディックの「聖なる侵入」のテーマは筆者の考えるような俗っぽいものではない) いや、まてよイエス・キリストは地球を侵略しなかったのだろうか?




ガフの部屋(ガフのへや、chamber of guf)とは、ヘブライ人の伝説にある、神の館にある魂の住む部屋のこと。ガフ(guf)はヘブライ語で体を意味する。


この世に生まれてくるすべての子供達は、この部屋で魂を授かり生まれてくる。スズメはこのガフの部屋から降りてくる魂を見ることができるとされ、スズメのさえずりは子供が誕生する前兆である。また、魂がガフの部屋からなくなると、魂を持たない子供が生まれスズメは鳴くのをやめてしまう。そのため、スズメがさえずるのをやめるのは世界の破滅の前兆とされる。


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「第七の予言」デミ・ムーア主演 ーー黙示録にヒントを得た〈七つの予言〉と、生まれてくる赤ちゃん、それにユダヤの伝承をからめた超大作感動オカルト・スリラー。

「欠けていたのは、心ではなく、魂だったのです」退職したコティワラはサニヤーシの身になっていて、そのように、チャンス医師に告げる。
「そ、そんなことがあるはずがない!」と、チャンスは叫んだ。「人間の魂に不足をきたしたなどとは言わせませんよ! それでは、まるで、宇宙の倉庫みたいなところに魂がたくわえられていて、赤ん坊が生まれるたびに、ひとつずつ支給されているみたいじゃないですか!」

チャンス医師のいったことは、そのままユダヤの伝承なのだ。

映画「第七の予言」では、
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ユダヤの伝承が語られる。

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ガフの部屋がどこにあるか? そんなことはもちろん論外なのである。

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デミ・ムーア扮するアビーは、生まれてくる赤ん坊の魂を救うため、自らは犠牲になり、予言者を救い、世界を破滅から救う。

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すずめがアビーの部屋に舞い込む。


この映画のほかにもガフの部屋は現れるーー日本産のアニメに。



その1  「エヴァンゲリオンのガフの部屋とはキリスト教と関係あるんですか?」


その2  『すずめの戸締り』考察

物語は主人公の鈴芽が扉を開いたことから冒険が始まる。

しかしその後はタイトルの通り『戸締り』をしていく。

ウズメは天岩戸を開くきっかけを作った神様なのになぜ戸締りをしていく物語にしたのだろうか。



人の意識の歪みがミミズを暴れさせるのであれば歪みそのものを正さなければならない。

閉じ師というのはあくまでミミズをこの世界に出さないための応急処置でしかないのだ。

ということは鈴芽が戸締りをすることで人の意識の歪みの根本を正すことに繋がる何かがあるはずである。

岩戸を開いたウズメが戸締りをすれば先述の流れに沿って伊邪那美は浄化され、伊邪那美と伊邪那岐との歪みが正され、伊邪那美が再び祭祀王となることで伊邪那岐と共に祭祀王と統治王が揃った本来の岩戸開きが完成する

ーーーーーー
という感じで、ガフの部屋は日本人にも意外なひろがり?展開をもっているのであるが、

ジョン・ブラナーは、自身のモチーフ、メインテーマ人口問題、にマッチさせるのである。
トマス・ロバート・マルサスの人口論もどきだ。


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WHOの医師チャンスは、インドの病院で、生まれて間もない赤ん坊を診察するコティワラ先生に出会う。



「それならば申しましょう。私たちがお会いした日に起こったことというのは、こうです」と、コティワラはいった。「かつて生存したすべての人間の数の正確な値が史上初めて打ち破られたということです」

それは抗老化薬の登場と時をおなじくしていた。

「この二十一世紀には、人類が進化発生して以来、かつて生存したすべての人間の数と同じほどの人間が現に存在しているという計算があります」と、チャンス医師は言っていた。

ヒンズー教信者なら、こういう数の情報に精通しているのだろうか?
輪廻や解脱といった仏教に通ずる概念を有しているのがヒンズー教であり、コティワラはサニヤーシなのだ。

そして、かれは永遠に凍結した高く青い山ーー氷原へとつづく道を歩み始めるーー「わたしは死ななければならない」と言い残して。

解脱なのか。
死に至る道を歩むのである。

ガフの部屋の魂がついに空になり、赤ん坊には魂が与えられない状況の下で。

ーーSF作家はそれぞれ、個別の人類学・進化学的テーマを宿命のようにかかえている。フリッツ・ライバーは幹細胞化と人体の奇形、ジョン・ブラナーは、人口論・発生学的宇宙人類学、、、共生が進化の鍵をにぎる、と言ったのは進化生物学者のリン・マーギュリスだ。そして、大御所のH・G・ウエルズは文明論的進化学ーーつまり「P」化する人類、レイ・ブラッドベリは、刺青の男、小松左京は「継ぐのは誰か」、ハル・クレメントは「重力の使命」、ジェイムズ・ブリッシュは「宇宙播種計画」などなどである。

SF特有の不老不死とはちょっと異なるテーマと言えよう。
さて、この「生なきもの」はヒンズー教がからんで、人口論的にとらえると、人口爆発が関係してくるテーマであり、一方、ガフの部屋による魂の問題が提起されるなど、かなり複雑なのである。
ただ、コティワラ先生は病院を退職しても、朝マックと図書館通いの毎日などとは無縁だったようである。抗老化薬の恩恵も受けずなにかに向かって歩いていたのだ。



こうして、ブラナーは短編でもSF的発想をおしみなく提示して、読者に、生命とはなにか、人口論と輪廻と不老不死とのかかわりの接点は? など、老いとヒンズー教、その他もろもろの問題意識を啓発するのである。しかも、ほのめかしの術を駆使して。

提示して、そのまま放置するのはチェーホフも同じだろうが、トルストイなら、提示したところから物語がはじまるので、SFなら、解決策にむかって進展させるべきなのかもしれないーー魂と生命と輪廻について。

スピリッチュアル・宗教SFを書いてみる?
聖なる侵入とからめるのだ。


赤い靴のロボット

「赤い靴のロボット」      著作   宮本宗明



「ま、お茶でもどうぞ」
彼女はゆっくりとうなずいてみせた。
「それともコーヒーの方がよかったですか?」
いいえ、お茶でけっこうです、と彼女はこたえた。そして話し始めた。

「ひどい病気にかかりましてね、こうしてお話ができるようになるなんて思ってもみませんでした。長い話なんですよ。ある人が結婚して、そうして、わたしにいったんですーーだから、もう会えないよってね。でも別れてからも、わたしは、彼のことをずっと覚えていました。あのひとが会社勤めをつづけて、だんだんと昇進していったのも、そして、奥さんと別れたのもーー知っていました」

まるでストーカーみたいでしょ?

いいえ、そんなことないですよーー好きだった人なんだね。

「そうね。お互い、そばによりそっていても、なんでもないけど、それは空気や水がおたがいの身体のそばにあるみたいで、あってあたりまえの存在だったのね。好きとかいうんじゃなくて」
でも、一緒に暮らせなかった?
彼女は銀髪の奥からわたしをみて、「覚えているだけでいいわーーそれまでにたくさんいろんな所へいったし、ふたりでいっぱい遊んだし。それで十分よ」
彼女はふと、うつむいた。
赤い靴になみだが一粒、落ちた。
「今は、どうしているんですか? 絵とかは描いてるんですか?」
描いてますとも、と、彼女は答えて、小さく笑った。わたしの生活ですもの。

彼女が去ったあと、だれもいない薄暗い玄関にしばらく立っていた。

田舎の家が渺々と目頭に浮かんだ。

「こんなものがドアに落ちてましたよ」
人間型お手伝いさんがわたしに紙片をさしだした。時給が高いお手伝いさんだが、よく気がつくロボットだ。亡くなった妻に似てなくもない。
それはちぎれていた。ロボットが手のひらでつなぎ合わせると、文字になり文章になった。

亡くなった妻が玄関に立っていた。
彼女の靴が残っている。赤い靴だ。

ロボットが、「この、ちぎれた手紙を机に並べて、お見せした方がよかったかな?」とそっとわたしに聞いた。「メモのようですけど」
亡くなった妻が赤い靴をはいたロボットに変わった。メモにはアドレスが記されていて、それは千切れて地面に舞い落ちた。

伝えきれない思いを記したアドレス。銀髪の彼女が残していったのか、そこに連絡してほしいのか?
田舎の家の玄関にロボットお手伝いさんが佇んで、わたしの方を見て、微笑んでいた。

エドモンド・ハミルトン再評価 11 「フェッセンデンの宇宙」

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「フェッセンデンの宇宙」エドモンド・ハミルトン著 中村 融 訳 ㈱河出書房新社  2004年4月30日初版発行

原著はなく、日本で編纂された短編集。
編者は中村 融で翻訳も担当している。

目次

1.  「フェッセンデンの宇宙」 (いわずと知れた人工宇宙テーマの名作)

2.    「風の子供」 (生きている風:メリット流の秘境冒険譚)

3.   「向こうはどんなところだい?」 (火星探検をリアリスティックに描いた傑作)

4.   「帰ってきた男」 (哀切きわまりないゴースト・ストーリー(の変種)。怪奇小説)

5.   「凶運の彗星」 (〈世界破壊者〉時代の侵略もの=典型的)

6.   「追放者」 (SF作家を主人公にした、一種のクラブ・ストーリー)

7.   「翼を持つ男」 (ミュータント・テーマの佳作)

8.   「太陽の炎」 (水星探査を題材にした作品)

9.   「夢見る者の世界」 (「胡蝶の夢」テーマの変種だ)


上記のかっこ内は、編訳者中村 融によるコメントの抜粋である。ーーあなたの知らないハミルトン、という巻末の解説は、まさに、かゆいところに手が届く感のある内容である。
というか、本編の九作品にざっと目を通して、この解説をあとから読めば、もう、それで充分に楽しめるほどだ。筆者などは、解説を先に読むので、本編はかなりとばして読むことができた。
それで、小説を楽しむつもり? といわれてしまいそうだが、長編はともかく、短編では、結論がわかると途中経過はそれなりなのでななめ読みが可能なのだ。

では、ぼくの感想を書こう。

1 「フェッセンデンの宇宙」 アイデアは秀逸だ。でも、今読むと、映画のメン・イン・ブラックの宝石のようなミニ宇宙を思い出してしまい、どうも興ざめである。台座円盤と上部円盤のあいだに作られた特殊場に極小宇宙を創造する話だ。そこでは、原子もスケールダウンされている。
では、中性微子・ニュートリノとかは? この電子の質量の千分の一といわれる粒子などもスケールダウンされているのだろうか?
そこに人間があやまって入り込むと、どうなるのか?(原子スケールに入り込む話は、すでに書かれている)

など、派生物語がいくつか浮かんでくる。

まず、この宇宙は、ビッグバンによりできたのか? と、考えてみた。最近、宇宙論の紹介本をみていたら、アインシュタインの宇宙方程式に対するフリードマンの解のひとつ、振動宇宙の膨張・収縮の説明に、収縮時は「最初の状態、つまり水の百兆倍の高密度な原子核物質の密度までまで圧縮される」ーーと書いてあった。
つまり、幾何学上の点ではなく、高密度の物質状態なのである。筆者は点に凝縮されると考えていたが、どちらが正解なのだろう?
ルメートルは、「宇宙卵が創生の瞬間に爆発した」と論じているという。彼は、点だと言っているのかいないのか?
一方、ホーキングは「特異点がない『無境界宇宙』」を提唱した。ヨハネ・パウロ2世が、「しかし、ビッグバン自体を探究してはなりません。それは、神の御業だからです」とホーキングにいったというのに。
特異点というのは、点ではないのか。

キリスト教では、特異点があってはまずいのだ。物理学でその理由を考えると。

横山順一(東大RESCEU),会誌編集委員会によると、以下のようになる。

「一般相対性理論によれば、宇宙の大きさを表すスケールファクター a は、ä=-4πG(ρ+3p)a / 3 という 2 階微分方程式にしたがう。 ρ は宇宙の平均的エネルギー密度、p は圧力である(c=1 としている)。 この式を見てすぐにわかることは、ρ+3p が正であれば、有限の時間さかのぼるとa(t)=0 になることである。 これが宇宙のはじまりの初期特異点である。 すべての物理法則が破綻する特異点から宇宙がはじまった、というのははなはだ都合の悪い話であるから、宇宙の大きさがある程度小さくなったところ(典型的にはプランクスケール)までさかのぼると時空の量子効果が効き出し、それより前は、そもそも時間発展という概念を定義できないので、結局のところ宇宙は量子重力の支配する混沌からはじまったのだ、というのが最も保守的な考え方である」

「時間発展」? 素人にはよくわからないが、「初期特異点」というのは、物理法則が破綻するとはいえ、学会においては、常識的な言葉なのだろう。つまり、点から宇宙は始まったということだ。
「量子重力の支配する混沌」に粒子は存在したのかーーなにかがうごめいていたのか? でも、点から宇宙が始まるというのは、『都合の悪い話』なんだよね。
(これらは、「記述できない」ということばでくくられるかもしれないが、概念ではなく、数学式で記述できないわけであるーーニュートン力学、相対性理論、量子力学、これらは対象の領域がちがっていて、それぞれの領域でのみ記述されるから)

宇宙論に、こういう保守的な考え方と別に先進革命的な考え方があるらしい。
『すべての物理法則が破綻する』特異点、となると、宇宙論とは結局、観念:「胡蝶の夢」みたいなものか?
現代物理学が正面切って言っているのではないが、これは、むしろ「古代の宇宙論」に匹敵するのでは。
点からはじまるのが、都合が悪いのなら、なぜ、物理学者の多くが、「ビック・バン」などと、フレッド・ホイルがラジオ番組で嘲笑的にいって、ガモフが面白半分に使い始めたという用語をそのまま使い、一般大衆に広く流布されているのかーーまるで、物理学、数学の究極の到達点はここだ! みたいな感じで。だが、(実存主義的には、研究費がでないと、研究者の生活が成り立たないから、そんなばかなことを表立って言う物理学者などいないだろう)ということに落ち着く。

物理学と数学のあやうさをすべて無視して、ではフェッセンデンの宇宙に特異点はあったのか?
ハミルトンはなにもいってない。SFだからだ。(フェッセンデンの宇宙は、できちゃったんだから、もし、言及したなら、SFとして、興ざめだったろう)

こうして、物理学をはるかに見ゆる、SFの世界は常識を超えて、奥ゆかしいのである。


2  「風の子供」 生きている風(かぜ)の物語で、感じが似ているブラッドベリの魔女の話の方が納得できるかな? 空間の子供とか、春の魔女とか。

3  「向こうはどんなところだい?」 火星探検における実話風SF=ハミルトン流のどぎつい物語である。どぎつさにおいて、ブラッドベリの恐竜の話などとくらべると、その差が歴然とする(双方ともSFなのに)

4  「帰ってきた男」 棺桶から蘇る話だが、これもブラッドベリに比較する話がある。やたらにブラッドベリを引き合いにだしてしまうが、短編における両者のアイデアは似ている点が多いのだ、それは、なぜだろう? というか、作家は、みんな似たような発想なのかもしれない。(すこしずれるが、SFマガジン掲載の「豊かなねむりを」生島治郎では、めざめるのは同じでも、冷凍睡眠なので結末はもうすこしふんわり感につつまれている)

5 「凶運の彗星」 星間パトロールシリーズその他で採用されるアイデア、つまり、ハミルトン一流の異星人による窃盗譚の類型である。この強盗は、貴金属・日用品などを盗むのではなく、惑星、衛星、太陽などもう少し大きなもの!をかすめとるのである。


6 「追放者」 胡蝶の夢 的な異次元世界、SF作家オチの話。

7 「翼を持つ男」 これもどぎついSFだ。なにしろ、翼さえあれば人間はそのままでも空を飛べる、という進化論的考察皆無の設定にファンタジー物語をむりやりはめこんでいる。すくなくとも、頭蓋、臓器、骨、などを超軽量化しなければ空を飛べまいーーというのが、おもいつきからスタートの奇想だけの話をいやがる、サイエンス派の者の感想。


8  「太陽の炎」 水星の焦熱面横断のとき、忽然とあらわれる水星の白いお化けと黒いお化けというのは、錯覚を表現したものだが、本作品では、お化けではなく、それが現実に降臨するので、ーーこれは秘密にしてね、というお願い。


9 「夢見る者の世界」 胡蝶の夢、というのは 調べたら 「目的意識に縛られない自由な境地のことであり、その境地に達すれば自然と融和して自由な生き方ができると荘子は説く」ということのようであるが、本作品では、自由になるどころか、主人公は死んでしまうのだ。つまり、真に自由になるという意味かな? ちがうよねーー映画マトリックスでは、どうだったかな?

もしかすると、ハミルトンは「スターキング」などを書いているとき、胡蝶の夢状態になっていたのではないか。
統合失調症でいう離人症も幽体離脱的なところは、似ているけど、自分がふたり存在するという感覚はない。 夢のなかと、リアルで別の自分がいる という状態のことだ、がスタートラインで、胡蝶の夢 の夢のなかの自分が、サラリーマンの自分を夢にみて、そのサラリーマンが胡蝶の夢状態に陥っている、と夢の中で認識できるか、が第二段階、で、第三段階は?
と延々と続くのである、が、これは合わせ鏡の世界だな。


この本には、
編者による著作リストが付されているので、紹介しておこう。

エドモンドハミルトン 著作リスト(巻末から引用)

1  The Horror on the Asteroid & Other Tales of Planetary Horror (1936) 短編集

2  The Star King(1949)   (別題 Beyond the Moon)  天界の王 矢野哲 訳 早川SF シリーズ(1969)  スター・キング 井上一夫 訳 創元SF文庫(1969)
   
3  The Monsters of Juntonheim(1950) 別題 (A Yank at Valhala)

4 Tharkol. Lord of the Unknouwn (1950) 

5 City at World's End (1951)   時果つるところ  南山宏 訳 早川書房『世界SF全集11』(1969)  

6   The Sun Smasher (1959)  太陽破壊者 中上 守 訳 日本文芸社 『太陽破壊者』(1978)所収  

7 The Star of Life (1959)

8   The Haunted Stars (1960) 虚空の遺産(川口政吉訳) ハヤカワ・SFシリーズ(1964) 別に 安田均訳 ハヤカワ文庫SF (1982)

9   Battle for Stars (1961) 『宇宙艦隊の奇襲』吉川純子訳 久保書店SFノベルズ(1975)

10   Outside the Universe (1964) 『星間パトロール 銀河大戦』 深町真利子訳 ハヤカワ文庫SF (1971)

11   The Valley of Creation (1964) 『最後の惑星船の謎』 田沢幸男訳  ハヤカワ文庫SF (1972) 連作短編集

12 Fugitive of the Stars (1965)

13 Crashing Suns (1965) 『星間パトロール  太陽強奪』  深町真利子訳 ハヤカワ文庫SF (1972) 連作短編集

14    Doomstar (1966) 『滅びの星』 鎌田三平訳  久保書店SFノベルズ(1981)

15  The Weapon from Beyond (1967) 『さすらいのスターウルフ』 野田昌宏訳  ハヤカワ文庫SF (1970)

16   The Closed World (1968)   『さいはてのスターウルフ』  野田昌宏訳  ハヤカワ文庫SF (1971)

17    World of the Starwolves (1968) 『望郷のスターウルフ』  野田昌宏訳  ハヤカワ文庫SF (1971)

18    Danger Planet (1968) 雑誌掲載題  Red Sun of Danger  『危機をよぶ赤い太陽』 野田昌宏訳  ハヤカワ文庫SF (1971)  キャプテン・フューチャー 18

19    Outlaw World (1968) 『ラジウム怪盗団現わる!』  野田昌宏訳  ハヤカワ文庫SF (1982)  キャプテン・フューチャー 19

20    The Quest Beyond the Stars (1968) 『輝く星々のかなたへ!』  野田昌宏訳  ハヤカワ文庫SF (1973)  キャプテン・フューチャー 9

21    Outlaw of the Moon (1969) 『月世界の無法者』  野田昌宏訳  ハヤカワ文庫SF (1980)  キャプテン・フューチャー 10

22    The Comet Kings (1969) 『彗星王の陰謀』  野田昌宏訳 ハヤカワ文庫SF (1978)  キャプテン・フューチャー 11

23    Planets in Peril (1969) 『惑星タラスト救出せよ!』 野田昌宏訳  ハヤカワ文庫SF (1978)  キャプテン・フューチャー 12

24 Calling Captain Future (1969) 『暗黒星大接近!』 野田昌宏訳  ハヤカワ文庫SF (1971)  キャプテン・フューチャー 2

25 Captain Future's Challenge (1969) 『挑戦! 嵐の海底都市』  野田昌宏訳  ハヤカワ文庫SF (1971)  キャプテン・フューチャー 3

26 Galaxy Mission (1969) 雑誌掲載題  The Triumph of Captain Future  『脅威! 不死密売団』 野田昌宏訳  ハヤカワ文庫SF (1975)  キャプテン・フューチャー 4

27 The Tenth Planet (1969) 『魔法の月の血闘』  野田昌宏訳  ハヤカワ文庫SF (1974)  キャプテン・フューチャー 16

28 The Magician of Mars (1970)   『透明惑星危機一髪!』  野田昌宏訳  ハヤカワ文庫SF (1970)  キャプテン・フューチャー 7

29 Captain Future and the Space Emperor (1970) 『恐怖の宇宙帝王』  野田昌宏訳 ハヤカワ文庫SF (1974)  キャプテン・フューチャー 1

30 Return to the Stars (1970) 『スター・キングへの帰還』井上一夫訳  創元SF文庫 (1973)  

31     What's It Like Out There (1974) 短編集

32     The Best of Edmond Hamilton (1977) リイ・ブラケット編  短編集

33     Kaldar, World of Antares (1998) 連作短編集 《スチュアート・メリック》

34     The Vampire Master And Other Tales of Horror (2000) 短編集


日本オリジナル編集
1. 「太陽系七つの秘宝」 Captain Future and the Seven Spaces 野田昌宏訳 ハヤカワSFシリーズ(1966)→ハヤカワSF文庫SF(1972)  キャプテン・フューチャー 5

2. 「謎の宇宙船強盗団」 Star Trail to Glory 野田昌宏訳 ハヤカワSFシリーズ(1966)→ハヤカワSF文庫SF(1972)  キャプテン・フューチャー 6


3. 「時のロスト・ワールド」 The Lost Wolrd of Time  野田昌宏訳 ハヤカワSFシリーズ(1967)→ハヤカワSF文庫SF(1972)  キャプテン・フューチャー 8

4.  「フェッセンデンの宇宙」 早川書房編集部編 ハヤカワSFシリーズ(1972) 短編集

5.  「宇宙囚人船の反乱」 The Face of the Deep 野田昌宏訳 ハヤカワSF文庫SF(1973)  キャプテン・フューチャー 13

6.  「人工進化の秘密」 The Star of Dread 野田昌宏訳 ハヤカワSF文庫SF(1978)  キャプテン・フューチャー 15

7.  「星々の囁き」 安田均編  青心社SFシリーズ(1982) 短編集

8.  「フェッセンデンの宇宙」 本書

キャプテン・フューチャーシリーズに属する作品で、ハミルトン以外の作者によるものは除外した。 また、日本版は雑誌掲載をオリジナル編集したもので、アメリカ本国では単行本化されていない作品がいかに多いかおわかりになるだろう。

ーー本書には、巻末に上記詳細なリストが付されている。たしかにハミルトンの旺盛な創作力がわかるものである。
が、キャプテン・フューチャー・シリーズの14と17を別作家として抜いているようだ。

調べてみると、ナンバー14は、『異次元侵攻軍迫る (ハヤカワ文庫 SF 440 キャプテン・フューチャー) 文庫 – 1981/8/1』
ナンバー17は、『フューチャーメン暗殺計画 (ハヤカワ文庫 SF 384 キャプテン・フューチャー) 文庫 – 1980/4/1』
のようであった。

キャプテン・フューチャー全20冊はつぎのとおり。


03 挑戦! 嵐の海底都市
02 暗黒星接近!
05 太陽系七つの秘宝
06 謎の宇宙船強奪団
08 時のロスト・ワールド
09 輝く星々のかなたへ!
13 宇宙囚人船の反乱
01 恐怖の宇宙帝王
16 魔法の月の血闘
04 脅威! 不死密輸団
11 彗星王の陰謀
12 惑星タラスト救出せよ
15 人工進化の秘密!
17 フューチャーメン暗殺計画 (by Joseph Samachson)=作者はジョゼフ・サマクスン。 表紙に名前が載っていない。ハヤカワ文庫SF
10 月世界の無法者
18 危機を呼ぶ赤い太陽
14 異次元侵攻軍迫る (by Joseph Samachson)=極限状況を描破した傑作と、別作家によるシリーズ作を収録
20 小惑星要塞を粉砕せよ!(マンリー W.ウェルマン、 野田 昌宏 | 1982/5/1)ハヤカワ文庫 SF
19 ラジウム怪盗団現る! (by Manly W. Wellman)
07 宇宙囚人船の反乱/異次元侵攻軍迫る!=サマクスン作 創元SF文庫


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